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2025.01.15
腫瘍科

悪性黒色腫

概要

犬の口腔内には、悪性黒色腫(メラノーマ)や扁平上皮癌、線維肉腫などのガンが発生することがあります。その中でもメラノーマの発生が最も多く、良性であることが多い皮膚のメラノーマとは異なり、口腔内のメラノーマはほとんどが悪性です。局所浸潤性や遠隔転移性が強く、腫瘍は急速に成長します。症状として口臭や出血がみられます。家でも口を見せてくれる子であれば直接腫瘍に気づくこともありますが、口臭を主訴として来院されるケースが多く、院内での検査ではじめて腫瘍が見つかります。悪性度の高い腫瘍ですが、早期の段階で外科手術による摘出が可能であれば、比較的長期の生存を見込める可能性があります。

ステージ 腫瘍の直径(cm) リンパ節転移 遠隔転移 生存期間の中央値(日)
1 <2 511
2 2〜4 164
3 >4 or 骨浸潤(+) 164
4 全て − or + 短い

症例(口腔内メラノーマ)

  • 犬種:トイ・プードル
  • 性別:去勢オス
  • 年齢:15歳
  • 体重:6kg
  • 主訴:口臭がひどくなってきた

検査所見

  • 身体検査:右側下顎歯肉および右口蓋扁桃に黒色腫瘤(図1)を認めた。
  • 画像検査
     ⚪︎X線検査:心陰影、肺野に異常は認められなかった。
     ⚪︎腹部超音波:腹部臓器に異常は認められなかった。
  • 細胞診検査:腫瘤への穿刺吸引を行った。鏡検では紡錘形の腫瘍細胞が多数確認された。細胞質内には種々の量のメラニン色素を有していた。

診断

各種検査結果より口腔内メラノーマ(ステージ3)と診断した。

治療

すでにリンパ節への転移が認められることから、根治術(下顎切除など)は難しく、緩和治療として腫瘤および扁桃の切除と、術後の補助的な化学療法を提案し、ご家族も希望されたため、実施することとした。可能な限りのマージンを確保し、腫瘤および右側扁桃を切除した(図2)。摘出した腫瘤の病理組織学的検査にて口腔内悪性黒色腫と診断された。

術後経過

手術後は集中管理下での治療を実施。体調は順調に回復し術後2日目に退院となった。ご家族との協議の上、症例の年齢を考慮し、比較的副作用の少ないメトロノミック化学療法(※)を実施することとした。症例は現在術後6ヶ月を迎えるが、腫瘍の再発や転移は認められず、良好な生活を送れている。

※メトロノミック化学療法とは
メトロノミック化学療法とは、少量の抗がん剤を間隔を空けずに継続的に投与する治療法です。従来の化学療法とは異なり、腫瘍そのものの退行を目的とせず、腫瘍が成長するために必要な血管の新生を抑えることで腫瘍の成長を抑える効果があります。この治療法は、自宅での治療が可能、化学療法による副作用が少ないというメリットがあり、外科手術後の補助療法、外科手術が困難な症例での緩和療法として選択されることがあります。

従来の化学療法との違い

従来の化学療法 メトロノミック化学療法
高用量の抗がん剤を間隔をあけて投与 少量の抗がん剤を頻回に継続投与
腫瘍細胞を直接攻撃する 血管新生の抑制を主な目的とする
副作用が起こりやすい 副作用が少ないことが多い
図1
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図2
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